006 髪結い・理髪師
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<理髪師>

「毎度ありがとさん。」
この日3人目の客を送り出した後、理髪屋の店主は床掃除をする
若者をチラリと見て呟いた。
「……おまえ、何年になる?」
「はい?」
箒を持った手を止めて若者は顔を上げた。
「ここへ来るようになってから、何年になったよ?」
「ああ、確か7年ですねぇ。それが何か?」
「いい加減に掃除以外の仕事もやりたいだろう。」
半ば独り言のように店主はため息混じりに言う。若者は困った顔で
雇い主を見た。そう思っていないわけではない。ただそのために
彼は大きなハードルを越えなければならないのだ。
「もう掃除は良い。ちょっとはハサミの使い方練習しとけ。」
店主の言葉に若者は、掃除道具を片付け理髪の練習を始める。
けして筋は悪くないのだ。ただ客を前にすると何故か手が震えて
止まらないのだと言う。
「客に怪我させるのが怖いくせして、怪我人の処置は上手いときた。
床屋より医者の方が向いてるんじゃねぇか?」
若者は首を振って答えた。
「医学書の古語ってのがどうも苦手なんですよ……。」
店主は再びため息をついた。

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